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九州国立博物館 20周年特集その3|「九州人百年の夢」がつまった唯一無二の国立博物館

  • 広報:大関
  • 3月24日
  • 読了時間: 10分
20周年のアニバーサリーイヤーがより一層楽しくなる記事をご紹介します
 

今年2025年に開館20周年を迎える九州国立博物館。4番目の国立博物館が福岡県の太宰府にできるということで大きな話題となりましたが、10月で20年が経ちます。当社では開館当初よりミュージアムショップを運営させていただき、ここまで共に歩んでまいりました。

今回は開館までの長き道のりをクローズアップします。


博覧会が博物館設立のきっかけに

 

2005年10月、九州国立博物館が太宰府の地に開館しました。東京・奈良・京都の国立博物館が総合・美術系博物館であるのに対し、九州国立博物館は「日本文化の形成をアジア史的観点からとらえる」という基本理念をもつ歴史系博物館です。


ガラス張りの外観が目を引く九州国立博物館
ガラス張りの外観が目を引く九州国立博物館

東博、奈良博、京博の開館から100年の時を経て、久しぶりに国立博物館の仲間が増えることになっただけに、開館への動きは近年始まったものだとばかり思っていたのですが、「九州に国立博物館を!」と最初に声が上がったのは、なんと明治時代に遡るのだそう。九州国立博物館設立の萌芽は他の3館とほぼ同時期だったんですね。

 

日本での博物館の設立は、19世紀の博覧会ブームに端を発します。

今年2025年は大阪・関西万博が開催されますが、一定期間、世界中の珍しいもの、貴重なもの、最先端のものなどが陳列される博覧会は、1851(嘉永4)年第1回ロンドン万国博覧会にはじまりました。1867(慶応3)年の第2回パリ万国博覧会に日本は初めて参加、江戸幕府と薩摩・佐賀両藩が出品し、ジャポニズム台頭の契機になったと言われています。


第2回パリ万国博覧会の会場となったシャン・ド・マルス公園
第2回パリ万国博覧会の会場となったシャン・ド・マルス公園

これを受け日本でも、1871(明治4)年に西本願寺書院で京都博覧会、1872年に東京・湯島聖堂大成殿で湯島聖堂博覧会、1875年に東大寺大仏殿回廊にて奈良博覧会が開催。さらに、1877(明治10)年〜1903(明治36)年にかけては内国勧業博覧会が計5回開催されました。

なかでも、湯島聖堂博覧会は文部省博物館として初めての博覧会開催でもあり、これが我が国の博物館の創立と開館となり、今の東京国立博物館の始まりになります。

その後、1895(明治28)年に帝国奈良博物館(現在の奈良国立博物館)、1897(明治30)年には帝国京都博物館(現在の京都国立博物館)が設置。初代総長は九鬼隆一、美術部長は岡倉天心で、ここに東京、奈良、京都の3国立博物館が出揃います。

 

はじまりは神社の宝物を公開した「太宰府博覧会」

 

では、九州はどんな様子だったかというと、1873(明治6)年には太宰府天満宮にて、太宰府展覧会が開催されています。神社所蔵の宝物品600点以上を広く一般公開するもので、当時としては非常に珍しい試みで好評を得て、3年連続で開かれるほどの人気でした。

博覧会を開催した太宰府神官と地元戸長が作成した「博覧会票告」には、

『「太宰府が菅原大神の久遊の地であり、かつては鎮西の一都会であった」ことが強調され、太宰府神社所蔵の宝物や県内の新古物品を収蔵展示して東京や京都に負けることなく、人々の知識を研き、文明の進歩に役立てたいという意味のことが書かれています。』(「太宰府人物誌 資料室だより76」より
太宰府展覧会が開催された太宰府天満宮(写真提供:太宰府天満宮)
太宰府展覧会が開催された太宰府天満宮(写真提供:太宰府天満宮)

これがきっかけとなり、地域の人々の間では恒久的な展示を望む機運が高まり、1893(明治26)年には太宰府天満宮神官らによって、「鎮西博物館設置之件」として福岡県に上申されます。内務省からは無事設置許可が降り、天満宮心字池西畔を建設地として建設事務所が建てられ、建設費と展示品収集費の募金活動も始まります。「鎮西」とは九州地方の別称で、これが九州国立博物館設立活動の最初です。しかし翌年に始まった日清戦争により、この計画は凍結してしまいます。

 

1899(明治32)年になり、帝国博物館美術部長の職を辞して日本美術院を開いた岡倉天心は、福岡日日新聞(現在の西日本新聞)の取材に対し、古来交通の要衝であった九州には、美術品のみならず歴史研究的にも貴重な資料が多いことを指摘し、大切に保存するためには九州博物館が必要であると説きました。これにより、およそ100年続く博物館誘致活動が始まります。

ここで軌道に乗れば、京都に引き続いて九州にも間を置かずに博物館が設置されたと思うのですが、うまくバトンは繋がりませんでした。


悲願の九州国立博物館開館へ

 

その後、度重なる戦争による社会的混乱と財政逼迫の時代が過ぎ、終戦後20年以上が経った1968(昭和43)年に文化庁が設立されます。それを機に、官民一体で「国立九州博物館設置期成会」が発足し、3年後には太宰府天満宮からの14万平方メートルの寄付を含む、約17万平方メートルの建設用地を確保します。

いよいよこれで九州国立博物館開館か! と思われましたが、願い空しく、先に千葉県佐倉市に国立歴史民俗博物館が設立されることが決まります。その代わりに、太宰府には九州歴史資料館が設置されます(九州国立博物館の前身施設で、現在は小郡市に移転)。資料館建設で目先を逸らされたような形になりましたが、それでも国立博物館を望む声は絶えません。

九州の学会や政財界を中心とした「博物館等建設推進九州会議」、県議会による「九州国立博物館誘致対策調査特別委員会」、つくし青年会議所提唱による「九州アジア国立博物館を誘致する会」、九州選出自民党国会議員による「九州国立博物館設置促進国会議員連盟」などが相次いで発足し、ますます誘致活動は熱を帯びていきます。


「博物館等建設推進九州会議」会合風景(写真提供:九州国立博物館)
「博物館等建設推進九州会議」会合風景(写真提供:九州国立博物館)

そうして1994(平成6)年、国により「新構想博物館の整備に関する調査研究委員会」が設置され、1996年3月、太宰府に建設が決定します。今までの国立博物館設立とは異なる大きな特色は、

『これまで国立博物館の誘致に努力してきた福岡県と九州国立博物館設置促進財団との三者共同で九州国立博物館がつくられるということです。福岡県庁に国立博物館設置対策室が設けられ、国県一体となって、これまで建築、展示等の検討を進めてきました。これからもそれぞれの役割分担を調整し合いながら、他の博物館諸機能について検討していきます。』(国立博物館ニュース647号より)とある通り、官民一体で設置に漕ぎ着けたことです。2005年(平成17年)10月16日、九州国立博物館は九州の人々の100年の夢と悲願を叶える形で開館しました。


九州国立博物館開館セレモニーの様子(写真提供:九州国立博物館)
九州国立博物館開館セレモニーの様子(写真提供:九州国立博物館)

時代に翻弄されながらも、太宰府博覧会から脈々と受け継がれた博物館設立の思いが、こうして身を結んだことを知ると、九州人でなくても胸が熱くなってきますし、改めて、博物館の存在意義についても考えさせられます。

2025年の文化交流展で企画されている「太宰府博覧会と鎮西博物館ー明治時代の博物館構想ー」展(会期:2025年10月21日(火)〜11月30日(日))でも、こうした歴史の一端が紐解かれるかもしれません。とても楽しみな展覧会です。

 

楽しい試みが随所にあふれる博物館

 

国・福岡県・九州国立博物館設置促進財団が共同して作った九州国立博物館は、それだけでも珍しいですが、誘致の段階のために設立された団体が、いまも博物館活動を支え続けているのも特筆すべき点です。

九州の経済界を中心に、寄付や募金を募りながら誘致を後押しした「九州国立博物館設置促進財団」は、博物館の開館後には「九州国立博物館振興財団」に名称を変更して、支援活動を継続しています。

また1988(昭和63)年に発足した「九州アジア国立博物館を誘致する会」は、現「九州国立博物館を愛する会」として存続しており、博物館を訪れる方々との交流や各種イベント・ワークショプの実施、花壇整備や美化活動、会誌の発行など、多岐にわたって活動しています。

個人の寄付も盛んだったそうで、「私も寄付したのよ」とお話くださるお客様も少なくないとのこと。20年を経ても、開館に寄与したことを自慢できる博物館であることは、とても素敵なことだと思いませんか?


ボランティア活動風景:バックヤードツアーの様子(写真提供:九州国立博物館)
ボランティア活動風景:バックヤードツアーの様子(写真提供:九州国立博物館)

「地域・市民と共に歩む」がモットーの九州国立博物館では、ボランティア活動も盛んです。現在展示解説、教育普及、館内案内など12のグループがあり、来館者と一緒に博物館を楽しみながら、活動を行っています。

来館者参加型のプログラムも多様で、その内容もとてもユニーク。『甕棺墓埋葬体験ワークショップ「王様が 死んだ!甕棺に 入れよう」』なんて、どんなことをするのかすごく気になりませんか? 大胆なネーミングも含め、弥生時代の遺跡が多い北部九州ならではのプログラムです。


平易な文章でふりがなも振られた「あんしんマップ」やスマホで楽しむ展示ガイドサイービスも
平易な文章でふりがなも振られた「あんしんマップ」やスマホで楽しむ展示ガイドサイービスも

ほかにも視覚や聴覚に障害をお持ちの方向けの体験プログラムや、博物館に来ることができない方向けのアウトリーチ活動、また光や音、においなどに敏感な人のための「あんしんマップ」も作成しており、全方位、どんな方でも博物館を楽しむことができるイベントや工夫が凝らされています。


アクセストンネルに飾られたクスッと笑えるポスターやWEBサイトのさまざまなコンテンツにも注目!
アクセストンネルに飾られたクスッと笑えるポスターやWEBサイトのさまざまなコンテンツにも注目!

博物館を身近に感じる「あじっぱ」も忘れずに!

 

新しいもの好き、珍しいもの好きといわれる九州人。きっと古代より海外諸国の刺激を受け続けてきたDNAのせいなのかもしれません。そんな九州という立地を展示だけでなく、肌身で感じることができる施設が、ミュージアムショップの隣にある体験型展示室「あじっぱ」です。“アジアのはらっぱ”という意味で、日本と交流のあったアジアやヨーロッパの国々の文化・文物に触れることができます。


賑やかな外観が興味を誘う「あじっぱ」
賑やかな外観が興味を誘う「あじっぱ」

「子供が初めて博物館に出会う場所」という側面も兼ね、博物館を好きな子が自然と育つよう、ファミリーで楽しめる工夫が凝らされています。五感を使い、体験を通して「発見」することで学びを得る仕掛けは、大人でもハマります。 


「あじっぱ」内観。針聞書のレプリカもいつでも見られます
「あじっぱ」内観。針聞書のレプリカもいつでも見られます

「100余年をかけてみんなで開いた博物館だもの、敷居の高さや堅苦しさを取り除いてリラックスして楽しめる場所もあってもいいよね」という他の国立3館には無い新感覚が、ここにも息づいている気がします。アジアの中にある日本というグローバルな視点を楽しんで体得できる、貴重な空間といえるでしょう。

“博物館が生活の中にあるのが当たり前”

“知りたいことがあったら博物館に行って聞けばいい”

そんな風に博物館との距離が近い人が九州国立博物館を中心にどんどん増えたら、日本の博物館に対する考え方が変わるかもしれません。いつだって先進地!そんな気概とワクワク感がある、ことし二十歳を迎えた国立博物館にこれからも注目していきたいと思います。

 

*****

 

太宰府と縁の深い九州国立博物館ですが、参拝客が博物館にも立ち寄れるようにと、元旦から開館しているのも国立博物館としては珍しいこと。初詣と初博物館詣がセットで楽しめたら、その年の博物館運は格段にアップしそうです。

九州に来たなら、素敵な展示、展覧会、ミュージアムグッズに巡り会えますようにと太宰府天満宮にお参りして、ぜひ九州国立博物館に足を運んでくださいね。

 

ミュージアムショップでお待ちしています。あじっぱに因んだグッズもありますよ!
ミュージアムショップでお待ちしています。あじっぱに因んだグッズもありますよ!

九州国立博物館ミュージアムショップ 公式Xアカウント https://x.com/haniten989


<九州国立博物館20th ANNIVERSARY 展覧会スケジュール>

【特別展】

はにわ  会期:2025年1月21日(火)〜5月11日(日)

九州の国宝 きゅーはくのたから  会期:2025年7月5日(土)〜8月31日(日)

法然と極楽浄土  会期:2025年10月7日(火)〜11月30日(日)

平戸モノ語りー松浦静山と熈の情熱ー  会期:2026年1月20日(火)〜3月15日


【文化交流展】

煌めきの古伊万里ー小郡c.c.コレクション  会期:2025年4月8日(火)〜7月6日(日)

さわって体験!本物のひみつ2025  会期:2025年7月8日(火)〜9月15日(月・祝)

甘味求心(仮)  会期:2025年10月7日(火)〜12月21日(日)

太宰府博覧会と鎮西博物館ー明治時代の博物館構想ー  

            会期:2025年10月21日(火)〜11月30日(日)

豊臣秀吉とアジアの外交(仮)  会期:2026年1月27日(火)〜3月8日(日)

 

<参考文献>

九州国立博物館ホームページ https://www.kyuhaku.jp

太宰府市ホームページ「太宰府人物誌」 https://www.city.dazaifu.lg.jp

国立国会図書館「博覧会 近代技術の展示場」 https://www.ndl.go.jp/exposition/index.html

日本記者クラブ取材ノート https://www.jnpc.or.jp/journal/interviews/33792

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