20周年のアニバーサリーイヤーがより一層楽しくなる記事をご紹介します
こんにちは。広報担当の大関です。
今年2025年に開館20周年を迎える九州国立博物館。4番目の国立博物館が福岡県の太宰府にできるということで大きな話題となりましたが、10月で20年が経ちます。当社では開館当初よりミュージアムショップを運営させていただき、ここまで共に歩んでまいりました。
そのミュージアムショップの人気者といえば、「はにわ店長(通称はにてん)」です。
はにわのぬいぐるみですが店長を名乗り、1年365日、毎日朝晩のXの更新を欠かさず行っています。ファンの声に後押しされて、マグネットや缶バッヂなどのグッズも生まれ、まさにミュージアムショップの「顔」!

今回はそんな「はにてん」の誕生から日々の撮影の舞台裏に迫ります。
はにわ店長誕生秘話ーこうして“はにてん”は生まれたー
はにてんが生まれたのは、2020年6月のこと。4月から続いた新型コロナウィルス感染症拡大防止のための緊急事態宣言が解除され、博物館も約2ヶ月ぶりにオープンしたものの、客足はばったり途絶えたまま…。当時を振り返ったリアル店長は、
「コロナで誰も来んけん、ホントにひまやったとよ。このままじゃいかん、何かせんといかんって焦っていました」。
そう思いながら誰もいない店内を見回すと、無人のはずなのになぜか目があうモノが…。これがリアル店長とはにわ店長の出会いでした。

「生身の人間が顔ば出さずにつぶやくよりも、はにわのぬいぐるみが店長として九州訛りでつぶやくほうが、お客様も楽しいっちゃないかな。そんな思いでSNSば始めました」
正直なところ、不慣れなSNSをすることで炎上して博物館に迷惑をかけるのではなかろうか、という不安もあったといいますが、どんな形でもお客様の意識に残るようにしないと、コロナの波に飲まれてしまうという危機感の方が大きかったそう。
藁をも掴む思いで、はにわのぬいぐるみの首元にハンカチを巻き、子供用の110cmのTシャツを着せて写真を撮り、Facebookで初投稿したのがはじまりでした。

「商品の宣伝は二の次で。“コロナが落ち着いたら太宰府においで、きゅーはくは楽しかよ、はにてんが待っとるばい!” そんなメッセージを込めて、「はにぽつり」とタイトルつけて、ぽつりぽつりと更新しよりました」
コロナ禍の希望になるような、ちょっと元気が出るような発信を心がけていましたが、現実にはコロナ不況は深刻で、太宰府天満宮の参道にあった九州国立博物館ミュージアムショップ参道店が8月に閉店となります。
しかしピンチはチャンス。博物館内にあるミュージアムショップ1店舗のみになったことで生まれた時間で、Twitterに注力していくことにします。現在のXでの「来館促進」「今日は何の日」シリーズはこの時に生まれます。おうち時間にSNSを見て過ごす人たちにうまく合致し、はにてんのつぶやきに少しずつフォロワーが付きはじめます。
癖の強い博多弁を喋る女の子という設定は、リアル店長がいたからこそ。
「自分では訛っとるつもりはないんですけどね。周りに祖父母や年配者が多くて博多弁とか九州弁とかの溢れとったけんかな、知らず知らず訛っているらしい。でもそれで九州らしさや親しみやすさを感じていただけるほうが、はにてんらしいかなと思って」

絶妙なキャラクター設定が功を奏して博物館のファンづくりにも貢献し、博物館の方からも一目置かれる愛されキャラに成長しました。
はにわ店長の撮影風景ー舞台裏を大公開!ー
はにてんのメインのお仕事は毎日のX更新。開店時には博物館イベントを紹介する来館促進ツイート、閉店時に記念日再現ツイートを行っています。特に閉店時の「今日は何の日」シリーズが人気で、さまざまな記念日のシチュエーションを再現しています。どうやったら毎日こんな撮影ができるのか、撮影の裏側を覗かせてもらいました。

訪問した日は、11月15日投稿分の「七五三」の準備中でした。おめかししたはにてん、かわいいです。後は撮るばかりかと思いきや、リアル店長が一声、
「なんかちょっとさみしいけん、菊の花とかあったら嬉しかばってん、できるぅ?」
なんと小道具もすべてスタッフの手作りなんです。

ちょうど11月は太宰府天満宮で菊花展が催されており、その雰囲気を表そうというわけです。しばらくすると、もう菊の花がレジ脇に姿を現していました。手の空いているスタッフが、工作したりパソコンで加工したりして作成しているそうです。

「本当にいいスタッフに恵まれとうけん、できとります。誰か一人でもこういう作業が嫌いな人がおったら、続かんかったと思いますよ。負担になってないか気にしとったけど、スタッフからは、お客さんが少ない日とかどうしても手持ち無沙汰になる時があるけん、そういう時に手や頭を動かせるものができて、逆に気が楽になった言われます」
ヒマ疲れがなくなり、すきま時間も目的を持って過ごすことができて、みんなイキイキと働くことができるようになったといいます。
撮影ブースは店のすぐ横。自然光を使う時もあれば、暗幕を張って雰囲気を出す時もあります。手作りは得意ですが、写真加工をできるスタッフがいないので、修正や撮り直しがないように、撮影する時点で万全の環境を作り上げて撮ります。

はにてんは日替わりで様々な衣装をまとうオシャレさん。
それを支えるスタッフは全員が洋服づくりをできる上に、絵、習字、着物の着付け、食べ物の再現など、各々が得意分野を持っており、総合力で様々なシチュエーションを作り出しています。もちろんこれまでには手先が器用でないスタッフもいたそうですが、後片付けなどを担当してもらうことで、よりスムーズに撮影が進んだそう。自分にできることをする、という気持ちがあれば、手先の器用さは関係ないんですね。


撮影内容のスケジューリングは副店長が担当。過去の撮影内容を踏まえて、記念日が重複しないようチェックしながら1~2ヶ月分の予定を立てます。それを得意分野に応じて各自が「私、これやります!」と宣言。さらにその衣装や装置を転用すればできそうな日を探して、あわせて受け持つことでもれなく担当者を決めていきます。あとは掲載日までに撮影を済ませ、リアル店長が博多弁のつぶやきを添えてアップ完了です。

衣装は、歴代の衣装が保管されたクローゼット(クリアフォルダー)から選び出してきて、形を整えて虫ピンで留めて着せます。これほどたくさんの洋服をどう管理しているのか、そしてどうやってはにわのぬいぐるみに着せているのかずっと疑問に思っていたのですが、前側から覆って虫ピンで留めることで、一つの衣装で何パターンかを表現したり、完全に着せなくても済むようになっていたんですね。脱がせるのも簡単ですし、よく考えられています。

スタッフの一人が、レジの合間に何かを作っています。これは何でしょうか?
なんと、回転寿司の日のための回転寿司のレーンだそうです。すごいなーと思ってみていたのですが、後日Xにアップされた姿を見てびっくり! 動くんですよ! なんですかこのクオリティ!
本当に何でも作ってしまうDIY力に脱帽です。

バックヤードはこれまで作った小道具でひしめいていますが、これぞ九州国立博物館ミュージアムショップの財産。これ、あの時の小道具で撮れるね、など、記憶をたどりながらなるべく手間をかけずに撮影できるよう、工夫しています。子供の着古した洋服やお菓子の空き箱など、手近なものを再利用して使っているところにもアイディア力を感じます。

ショップのマスコットキャラクターとしてはにてんが育ったおかげで、他店のショップから羨ましがられることもあるそうですが、
「スタッフみんなでやっとることですが、その努力もわかっとって欲しいゆうんはありますね。よっぽどの覚悟がない限り、4年間、毎日朝晩欠かさずいうんは、なかなかできんもんです」

確かにその通り。はにてんは1日にしてならず、です。
これからもスタッフ全員の力で、ミュージアムショップとはにてんを盛り上げていってほしいと思います。


***
はにてんとリアル店長にはいま、夢があるとのこと。
「応援してくださるファンのために、はにてんのイベントができたらなって思っとります。ちょうど「はにわ展」もあるけん、なにかミュージアムショップもお客さまと一緒に盛り上がれる企画をできたらなって考えてます」

例えば「いいね数」の多かったシチュエーションを再現して展示したり、はに店にお洋服を着せて写真を撮れるワークショップをしたり、考えているだけで楽しい想像が広がります。ぜひ実現に向けてがんばってほしいと思います。
ぜひ九州国立博物館ミュージアムショップのX、皆さんもフォローしてみてくださいね。
九州国立博物館ミュージアムショップ 公式Xアカウント https://x.com/haniten989
<九州国立博物館20th ANNIVERSARY 展覧会スケジュール>
【特別展】
はにわ 会期:2025年1月21日(火)〜5月11日(日)
九州の国宝 きゅーはくのたから 会期:2025年7月5日(土)〜8月31日(日)
法然と極楽浄土 会期:2025年10月7日(火)〜11月30日(日)
平戸モノ語りー松浦静山と熈の情熱ー 会期:2026年1月20日(火)〜3月15日
【文化交流展】
煌めきの古伊万里ー小郡c.c.コレクション 会期:2025年4月8日(火)〜7月6日(日)
さわって体験!本物のひみつ2025 会期:2025年7月8日(火)〜9月15日(月・祝)
甘味求心(仮) 会期:2025年10月7日(火)〜12月21日(日)
太宰府博覧会と鎮西博物館ー明治時代の博物館構想ー
会期:2025年10月21日(火)〜11月30日(日)
豊臣秀吉とアジアの外交(仮) 会期:2026年1月27日(火)〜3月8日(日)
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