ウポポイ開業5周年特集その4|歌・踊り・手仕事など、様々な切り口でアイヌ文化に触れて、学びを深めよう!
- 広報:大関
- 11月13日
- 読了時間: 13分
更新日:1 日前
今年2025年は、ウポポイ(民族共生象徴空間)の開業5周年の節目の年。コロナ禍でのオープンから5年の時を経て、多くの旅行者や修学旅行生、インバウンドがアイヌ文化に触れる場所として賑わっています。

当社ではウポポイ内にある国立アイヌ民族博物館のミュージアムショップおよびエントランス棟にあるショップ(お土産店)の「ニエプイ」を、開業当初より運営させていただいています。
開業5周年特集その4では、ウポポイで楽しめる様々な体験をご紹介します。
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<ウポポイ開業5周年特集ラインナップ>
その4 歌・踊り・手仕事など、様々な切り口でアイヌ文化に触れて、学びを深めよう!(いまココ)
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手わざを訪ねてVol.10 河岸麗子さん/編物作家
手わざを訪ねてVol.11 山田祐治さん/木彫り作家
手わざを訪ねてVol.12 岡田育子さん/刺繍作家
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ウポポイでなにする? スケジュールを確認して盛りだくさんの体験を!
イランカラプテ(挨拶の言葉)。広報担当の大関です。
今回は「ウポポイ」で体験することができる様々なプログラムをご紹介します。その1でご紹介しました通り、インフォメーションやエントランスゲートなどで配布している「プログラムスケジュール」に体験や公演のスケジュールが一覧表記されています。

体験をたっぷり楽しみたい派の方は最初にざっと予定を組んで、体験交流ホールや工房での有料プログラムなどの予約や整理券を先に手配してしまいましょう。もちろん、行き当たりばったり派の方でもその時々で「これから○○が始まりますー」「いまならすぐに体験できますよ!」など教えてくださるので、タイミングに応じてプログラムを楽しむことができます。
ウエカリ チセ 体験交流ホール(要整理券、無料)
エントランスを背にして左に進んでいくと見えてくる、ドーム状の「ウエカリ チセ(体験交流ホール)」では、歌と踊り、楽器演奏や短編映像上映などが行われています。1日7回ほどの公演が行われており、体験交流ホール前で発券してもらう整理券が必要ではありますが、空きがあればその場ですぐに受付して入場することもできます。

私は芸能プログラムの「シノッ」と映像プログラムの「カムイ ユカラ」を拝見しましたが、照明や音響が駆使されたホールならではの迫力を楽しむことができました。後ほどご紹介する伝統的コタンでも、歌や踊りを見ることができますが、よりショーとしても完成されており、じっくり鑑賞することができます。

短編映像も、アイヌ民族に語り継がれる神話の世界観が美しいアニメーションで表現されていて、ぐっと引き込まれました。展示や解説を読み聞きするだけでは理解しにくいことも、こうした映像で見るとすんなり頭と心にはいってきます。ぜひ予定を合わせて1回は公演を見ていただきたいと思います。

また、たまたま運よく札幌ウポポ保存会の皆さんによる重要無形民俗文化財「アイヌ古式舞踊」も拝見することができました。古式舞踊は地域によって伝承曲目や舞い方に違いがあるそうで、例えば「鶴の舞」でも白老では「サロルンチカプ リムセ」、平取では「ハララキ」、旭川では「チカプ ウポポ」と呼ばれ、それぞれ歌、踊りが異なるとのこと。ご年配の方からお子さんまでが参加して舞踊を披露する様子がなんとも微笑ましく、こうして年長者から子供達へと受け継がれてきたんだろうなと、情景が浮かびました。
ヤイハノッカラ チセ 体験学習館

体験交流ホールの向かいに立つ体験学習館は団体向けの体験活動のスペースであるとともに、一般の方向けに予約制でアイヌ民族の料理が学べる「ポントキッチン」や「イペアン ロ!」が体験できます。平日開催予約制の「ポントキッチン」は30分ほどで簡単なお団子「シト」などを作って試食する体験。また、週末に開催される「イペアン ロ!」は事前予約制の実食体験プログラムで、「オハウ(汁もの)」を味わうことができます。味覚の記憶はよく残るものだけに、興味を惹かれます。今回はいずれも参加できなかったので、次回は是非とも体験したいと思っています。
アクシノッ 弓矢体験

横並びの体験学習館別館では弓矢体験「アクシノッ」ができます。
アイヌ民族の男性にとって弓矢は生活に欠かせない道具であり、常に身近にあるものでした。エゾシカやヒグマ、アザラシ、サケ、マスなどの生物を、弓矢などの道具を使って捕え、食料としてはもちろんのこと、衣類、靴、漁具など様々な用途に無駄なく活用しました。子供達は狩りや漁の真似事をしながら、道具の使い方を覚えたと言います。

そんな子供の弓矢練習体験と、大人向けの本格的な弓矢体験ができるのが「アクシノッ」です。無料でできる子供の弓矢体験は、枝からぶら下げられたゆらゆらと揺れる貝殻を獲物に見立て、先の尖っていない遊び用の矢を射ます。私もやってみましたが、簡単そうに見えてこれがなかなか当たらない!3射挑戦して全部ハズレ。悔しくて再挑戦しましたが、ギリギリ1射がかすったのみでした。子供用とはいえ侮ってはいけません。

さらに隣にある大人用の弓矢体験(1回500円、小学生以上*小学生は要保護者)は、復元した弓矢を用いてシカ型の的に射るというもの。弓も重く、竹でできた鏃(やじり)がつけられており、大人の男の人でも弦を引くのに力が要るそう。我こそはという方はぜひ参加して見てはいかがでしょうか。
イタク トマリ アイヌ語体験
さらにその隣の体験学習館別館3には、アイヌ語にフォーカスしたアイヌ語体験「イタク トマリ」があります。複数のモニターに映る画とともに言語をあびるように体感したあとは、大画面に映し出されたアイヌ語を「聞いて」「見て」「想像して」「声にする」ことで映像の変化が楽しめる、言葉のインスタレーションです。

幻想的な風景と生き物たちのイラストもかわいらしく美しい色合いで、画面を眺めているだけでも言葉の世界に浸ることができます。小さなお子様でも体験できるよう、低めに設置されたマイクに向かって言葉を話すと…。言葉が像を結んで、視覚でもインプットされるので、アイヌ語に対する親近感が増していきます。言語に興味がある、という方には特におすすめしたいアクティビティです。
シミムタラ 芝生広場、シニ ウシ 休憩所
体験交流ホールの奥、ウポポイの左手最奥には芝生の広場が広がります。
こちら側からポロト湖を挟んだ対岸につづく博物館から伝統的コタンの風景がとても美しいので、ぜひみなさんにも眺めていただきたいと思います。ポロト湖の風景は晴れの日も良かったですが、霧の濃い日も幻想的でしたし、これからの季節は雪景色も美しいことでしょう。

体験学習館の並びには冷暖房完備の休憩所もあります。印象的だったのは礼拝室があったこと。民族共生を謳う施設として、礼拝を日課とする方への配慮がなされていることは当然かもしれません。世界のどの国の人でも安心して旅ができる用意をすることは、とても大切だと感じました。


ところで、休憩所のそばの植え込みにトゥレプ(オオウバユリ)が植えられており、蕾をつけているのを見ることができました。トゥレッポんが右手に持っているアレです。6〜10年ほどかけて成長して、最後に1度だけ花を咲かせ実を結ぶといいます。ウポポイ内には草木の見本園もあり、アイヌ文化に縁のある様々な植物も見ることができます。

イカラ ウシ 工房(要予約、一部有料)
今度は博物館の右手エリアに行ってみましょう。
「イカラ ウシ(工房)」はアイヌ民族が生活の中で用いた道具の展示や、刺しゅうや木彫りなどの実演と体験を行う場所です。

ヒグマやエゾシカの毛皮、シナノキやオヒョウの樹皮の繊維などは直接触れることもできます。私は、木の皮で服を作るってなかなか想像しにくく、樹皮の繊維の柔らかさを知りたかったので、ここで触れることができ理解が深まりました(とってもしなやかでした)。

体験は刺しゅう体験「イカラカラアン ロ」「はじめてのムックリ」「はじめてのトンコリ」に参加しました。いつも思うのですが、やはり聞く・見るだけでは理解に限度があるというもの。その壁をひょいと飛び越えさせてくれるのが体験ワークショップです。
刺しゅう体験「イカラカラアン ロ」はバッグ、プチフレーム(いずれも1000円)、コースター(無料)から選ぶことができ、チェーンステッチでアイヌ文様を刺しゅうして作品を作る60分ほどの体験です。チェーンステッチなら簡単かも?と思いきや、目が細かくその目を揃えるのが結構大変。ゆっくりゆっくり針を刺しながら、キラウ(角)、モレウ(渦のような目のような模様)、アイウシ(棘)が組み合わさった、伝統的な文様を作ります。

博物館に展示されている衣服は、立派な刺しゅうが施されたものが多いですが、これらは儀式などの時に身につけるもの。ワークショップを担当してくれた方は、「祖母の代までは着物を日常的に着ていましたけど、無地の着物姿しか見たことないです。刺しゅうをしていた姿は思い出すので、祖父や家族のものを作っていたんでしょうね」とのこと。女性の手しごとでもある刺しゅうは、大切な人を思って施すものだといいますが、記憶の中のお祖母様はまさにそのような感じだったのでしょう。

お話を聞きながら針を進め、私の刺しゅうも完成(なかなかの出来栄えですよね?)! 糸の色を変えて二重にするとより綺麗に見えるそうなので、自宅でやりたいと思います。
「はじめてのムックリ」と「はじめてのトンコリ」は、ムックリ(口琴)を弾いてみたら楽しすぎて、
トンコリもやらねば!と思い、続けて参加してみました。体験交流ホールで聞いた音色には程遠いものの、あの独特な音色を自分で奏でることができるのは、アイヌ文化に今まさに触れているという実感が湧きます。

ムックリは「口琴」と呼ばれる楽器の一種で、木製や竹製、鉄製がありますが、現在は竹製が主流となっています。ムックリに付いている紐を指で引き、弁の振動を口の中の空気に共鳴させて音を出します。体験料金(1000円)にムックリ代が含まれているので、自分のムックリを手に入れることもできます。自分のお土産に楽器を買うなんてなかなか無い体験です。

実際にやってみるまで、どういう風に音を鳴らしているのかよく理解できていなかったのですが、演奏方法を教わり5分ほど練習するとそれなりに音が鳴るようになり、途端に口の開け方や息の強弱で表現をつけるという意味がわかってきます。
一方、トンコリは樺太から北海道北部のアイヌ民族が用いた弦楽器で、縦に抱えて指の腹を弦にかけるように弾きます。

人の形を模しているとされ、ギターのように縦に構えて弾きます。
大きいだけに、楽器を弾いている実感があり、練習にも熱が入ります。
5弦を開放弦のみで弾くのですが、楽譜を見た瞬間は、こりゃ無理だ、絶対に弾けない、と絶望的な気分に…。でも、スタッフさんが丁寧に楽譜の見方を教えてくださり、最後にはなんとか参加者の皆さんと合奏をすることができました!
テエタ カネ アン コタン 伝統的コタン
最奥にある茅葺きの家屋(チセ)が再現されたエリア「テエタ カネ アン コタン(伝統的コタン)」は、アイヌ民族の集落を訪ねたかのような風景が広がります。
全部で5棟あり、大きな方から「ポロ チセ」、「ポン チセ」、「シノッ チセ」の3棟ではコタンでの暮らしの手わざや歌や紙芝居などが上演されます。また、チセの向かいでは踊りの公演「ウパシクマ」を行う広場があります(冬期はチセ内で開催)。

「ポロ チセ」は一年中囲炉裏で火が焚かれ、その炉を囲んで代々受け継がれてきた物語や叙情歌(気持ちを表現した歌)などの口演が行われます。私は叙情歌を聴きましたが、歌の内容の解説を最初にしてくれるので、情景を思い浮かべながら聴きました。レプニ(拍子木)で炉端を叩いて拍子を取りながら繰り返される節回しは、初めて聞くのにどこか懐かしいような、少し悲しいような、心に響く旋律でした。


炉のまわりではサケを乾燥させたり(左)、トゥレッポんが左手に持っているトゥレプアカム
(トゥレプの澱粉粉で作った保存食)が干してあったり(右上)します。
鮭の皮で作った靴(中)やホタテの貝殻の灯明皿(右下)などもありました
「シノッ チセ」ではアイヌ民族の衣装体験ができます。子供用から大人用まであるので、家族や友達同士で衣装をまとって記念撮影に最適です。トゥレッポんも見っけ!

また「シノッ チセ」では、歌や紙芝居、アイヌ語のワークショップなどが1日5回ほど行われています。私は紙芝居を拝見しましたが、カムイ(いわゆる神)とアイヌ(人間)のつながりや、昔と今の暮らしの様子、動物の鳴き声など、身近な話題で楽しくアイヌ文化に触れることができました。短いプログラムなので、時間が合えば気軽に参加できるのでおすすめです。


広場では「ウパシクマ」の公演を見ることができます。コタンでの暮らしの紹介をする回もあれば、歌や踊りが披露される回もあります。家や船、狩猟具、地名など、テーマもいろいろ。踊り手達の歌声がコタンに響くのはとても情緒があり、かつての白老コタンやポロトコタンの様子を思い浮かびました。

ポロト湖の船着場では「チプ(丸木船)」の実演・解説も行われています。ウポポイのスタッフが2ヶ月かけて作ったというチプの操船法や、生活の中でどのように使われたのかなどを話す後ろで、実際に舟を漕ぐ姿を見ることができます。

いかがでしたか。盛りだくさんすぎるプログラムの数々。私もご紹介していて「こんなにたくさんあったんだ」と改めて驚きました。そして実際にたくさんの体験をさせていただき、それが私のアイヌ文化の理解に確実にプラスになっていることを感じました。博物館と体験型フィールドミュージアムが同じ場所にあることで、五感で学びを得ることができるウポポイ。展示やワークショップだけでなく、白老の自然も丸ごと楽しんでいただきたいと思います。
ウポポイ(民族共生象徴空間)
北海道白老郡白老町若草町2-3
TEL:0144-82-3914
入園料:大人 1,200円、高校生 600円、中学生以下 無料
開園時間:開園は9時、閉園は時期によって異なるので、ウェブサイトで要確認







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