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【ショップ便り】約6年ぶりの夏の開催! 東京都庭園美術館の「建物公開2025 時を紡ぐ館」

  • 広報:大関
  • 7月29日
  • 読了時間: 10分

こんにちは。広報担当の大関です。

今回は、猛暑続きでお疲れ気味な心に、そっと涼風が吹き渡るような素敵な展覧会をご紹介します。

都心にありながら濃い緑に包まれた、瀟洒な雰囲気の東京都庭園美術館では、現在、展覧会「建物公開2025 時を紡ぐ館」が開催中(2025年8月24日まで)です。

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緑あふれる東京都庭園美術館。最寄駅はJR山手線・東急目黒線目黒駅か 東京メトロ南北線・都営三田線白金台駅です。


建物の特性を活かしながら、装飾芸術の観点から様々な美術作品を紹介する展覧会を年に数回開催している庭園美術館ですが、特に建物そのものに焦点を当てた建物公開展は、旧朝香宮(あさかのみや)邸の素材・技法・意匠などを楽しめる展覧会として、建物ファンに人気です。年に一回開催されていますが、今年は約6年ぶりに夏に開催されると聞き、建物と鮮やかな緑の調和を楽しみに伺ってきました。



「建物公開2025 時を紡ぐ館」とは


東京都庭園美術館本館は、1933年に朝香宮家の自邸として建てられました。朝香宮家は久邇宮朝彦(くにのみやあさひこ)親王の第八王子鳩彦(やすひこ)王が、1906年に創立した宮家です。1923年、軍人として欧州留学中の鳩彦王はフランスで交通事故に遭い大怪我をし、現地で長期療養することになり、看病のため渡仏した允子妃とともに長くフランス文化に触れる機会を得ます。ちょうど1925年にはパリ万国博覧会(アール・デコ博)が開催され、夫妻は何度も足を運んだといいます。

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外観は鉄筋コンクリート造りにリシン掻き落としが施されたシンプルな造りですが、 内装は洗練されたアール・デコ意匠でまとめられています。


帰国後、夫妻は強い影響を受けたアール・デコ様式を取り入れた自邸の建設計画を立てます。全体設計は宮家邸宅を手掛けていた宮内省内匠寮(たくみりょう)、主要な部屋の内装設計はフランス人装飾美術家アンリ・ラパンを起用し、唯一無二の独特な意匠を誇る宮邸建築として竣工。朝香宮家の人々は皇室離脱する1947年までここに住んでいました。

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メインビジュアルの14・7・19・7・42の数字は、邸宅、公邸、迎賓館、催事施設、 そして美術館となっての年数を示しています。


今回の「建物公開2025 時を紡ぐ館」では、旧朝香宮邸における建築空間の「機能の変遷」に着目しています。というのも、朝香宮家が邸宅を離れた後、この建物は吉田茂元首相の公邸、国の迎賓館(白金迎賓館)、民間の催事施設(白金プリンス迎賓館)、そして東京都庭園美術館と移り変わりながら、時を紡ぎ続けてきました。

そうした機能・役割の移り変わりを、写真や映像資料を通して紐解くほか、建物の魅力を存分に楽しめるよう、家具や調度品を用いた再現展示や3階ウインターガーデンを特別公開、さらには普段は建物や展示品の保護のために閉じられているカーテンを開け放し、夏の新緑を望めるように設えています。いつになく開放感のある「建物公開2025 時を紡ぐ館」の様子をさっそくご紹介しましょう。



まるで建物が生きているかのよう! 様々な「時」を追体験できる展示


今回の主役は建物。他の展覧会時には、壁や窓の前にパネルを立てて作品を展示していますが、今回はそうしたものは取り払われ、カーテンも多くが開けられていることで格段に明るく、建物全体が生き生きとして見えます。当時使われていた調度品なども置かれ、ここで過ごした人々の気配が感じられる気がします。

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かつては賓客を、今は来館者を迎える玄関の顔といえば、ルネ・ラリックのガラスレリーフの女性像。 ラリックが朝香宮邸のためにデザインしたもの。

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アンリ・ラパンがデザインした白磁の香水塔。朝香宮邸時代に上部飾りの部分に香水を施すと、 内部の照明の熱でその香りが広がるという、お洒落すぎるアロマポットです。

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アンリ・ラパンの油彩画がデザインされた壁紙の小客室には、朝香宮夫妻の思い出の写真などを展示。 滞欧中に購入し、持ち帰ったとされるテオドール・マドセンの《三羽揃いのペリカン(ペンギン)》がキュート!


大客室と大食堂は、朝香宮邸の中で最もアール・デコの粋を感じることができる場所。大客室の壁面上部にはアンリ・ラパンの庭園の情景を描いた壁画、ルネ・ラリックのシャンデリア、マックス・アングランのエッチングガラス扉、レイモン・シュブの扉上部の装飾、そして宮内省内匠寮による暖炉のレジスターなど美術作品でできた部屋と言っても過言ではないほど。白金迎賓館時代には世界各国の賓客を迎え入れた写真なども残っており、華やかな様子を伝えています。

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朝香宮邸時代から引き継がれた家具や調度品が設えられた大客室。 濃密なアール・デコの空間を追体験することができます。


大食堂は足を踏みいれた瞬間、感嘆の声を漏らすお客様がたくさん。テーブルセッティングされた大きな食卓の向こうには眩いばかりの庭園のグリーンが切り取られ、弧を描く窓辺の美しさも際立ちます。食堂にちなんで、食物のモチーフがあちこちに散りばめられ、アンリ・ラパンら内装作家の遊び心も感じられます。壁面パネルでは、白金迎賓館時代の「いけばな教室」の様子が紹介されており、様々な催しで国賓をもてなしていたことが伺えます。

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いまにもゲストが現れそうな大食堂。天井照明や壁にざくろやパイナップルなどのモチーフが用いられています

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写真下左)マントルピース上のランプは、ジャン=バティスト・ゴーヴネ《テーブル・ランプ》1937年  写真下右)天井の照明器具は、ルネ・ラリック シャンデリア《パイナップルとざくろ》  写真右)壁面のレリーフはイヴァン=レオン・ブランショ作


大食堂の向かいの喫煙室には、アール・デコや建築を学ぶために世界を渡った、宮内省内匠寮の建築技師・権藤要吉の旅の記録が紹介されています。イギリスやフランスなど11ヵ国160施設余りを訪れ、世界の近代建築の知識と技術を学んでいたからこそ、アンリ・ラパンらの設計・装飾の意図を的確に読み取り、アール・デコと和の意匠を見事に融合させることができたのです。フランスと日本の最高の技と素材が用いられた、朝香宮邸の均整の取れた美しさはこうした努力と熱意によって培われていることがわかります。

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権藤要吉氏の世界旅行を紹介するコーナー。今から100年前の1925年当時の旅はどんなものだったのか、想像が膨らみます。


2階は朝香宮家のプライベートルームになっており、主に宮内省内匠寮が内装を手掛けています。殿下、妃殿下、若宮、姫宮の寝室や居間、書斎などがあり、それぞれの好みを感じられるデザインが施された部屋が並んでいます。特に、照明やラジエーターカバー(暖房器具の覆い)の豊かな装飾性は、ぜひ注目してほしいポイントです。

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様々な意匠の照明。天井の取り付け部の装飾も凝っていて、見上げた時に一体となって楽しむことができます。

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鋳物製のラジエーターカバーは、宮内省内匠寮の技師の仕事。部屋の用途に合わせた多様なデザインが見どころです。


明るい書斎は快適性と機能性に優れた、ラパンの内装へのこだわりが感じられる一角。ドーム型の天井と間接照明のもと、フランスから輸入した机・椅子・電話台・カーペットが置かれています。机は太陽の動きに合わせて回転する仕組みになっており、自然光のもとで作業ができるよう工夫されています。こんな場所で仕事ができたらはかどるだろうなぁと思ったら、吉田茂元首相もここで執務を行なっていたそう。うらやましい限りです。

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元は四角い部屋ですが、四隅に家具を置くことで、円形に見える工夫をしています。

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吉田茂元首相が来客と談笑したり、家族や愛犬と寛いで過ごしたりする様子を伝える写真パネルも展示。

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殿下と妃殿下の居室からのみ出入りできた、夫婦専用のベランダ。 国産の黒と白の大理石が市松模様に敷かれており、ザ・モダン!

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姫宮の寝室と居間は可愛らしい意匠が多く、再現展示も姫宮がさっきまでお支度をしていたかのように設えてありました


個人的に一番気に入った場所が、北側ベランダです。夏の家族団欒場所として使われていたそうで、床には陶器の布目タイルがモザイク状に敷かれ、なんとも涼やか。長椅子に腰を下ろして休んでいたら、団扇片手に談笑される様子が脳裏に浮かんできました。

隣接する第二浴室・化粧室は、姫宮が使用したもので、美術館になってからは初めて一般公開されています。モザイクタイルや壁紙は当時のままとのことで、時の流れを感じさせてくれます。

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季節を意識した部屋が多いのも特徴。北側ベランダは夏向きの場所なので、 冬の弱い日差しの中だと、また印象が変わるかもしれません。

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特別公開の3階ウインターガーデンは冬季の植物用温室。マルセル・ブロイヤーの赤い椅子は殿下ご自身が東京松坂屋で 購入したものなのだそう。ウインターガーデン_マルセルブロイヤー《ワシリーラウンジチェア》(復刻品)



新館の迎賓館時代の映像資料や美術館としての歩みも見逃せない!


新館展示室は、朝香宮家が残した調度品や各室の壁紙の紹介などのほか、迎賓館時代の映像資料が放映されています。赤坂に迎賓館ができるまで、白金迎賓館が国賓をもてなす場であり、外交に欠かせない舞台であったことがわかります。

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記録写真のほか、海外からの賓客に友好の証として送られた「東京都の鍵」なども展示


1981年に東京都所有となった旧朝香宮邸は、1983年に美術館に生まれ変わります。美術館として、この歴史的な建物を保存・修復して公開することももちろんですが、一方で現代美術などの美術品を収集し展示も行っています。最後のコーナーにはハンズオン展示が設けられており、香水塔やラジエーターカバーの複製品に触れることができます。

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左)オットー・クンツリ《コマイヌⅦ》2015年 素材に真鍮、金メッキ、初音ミクの髪(!)が使われています 右)ハンズオン展示の様子。触れることでどのような構造か、理解が深まります


ところで、「触れる」といえば、本館の受付の奥にある「ウェルカムルーム」もぜひ見ていただきたいところ。公式アプリの利用端末の貸出のほか、旧朝香宮邸の各部屋の役割を、触って、会話して、理解を深めることができるツール「さわる小さな庭園美術館」をはじめ、ぬり絵などのワークシート、開催中の展覧会に関連する書籍などが用意されています。お子様連れでも楽しむことができ、アートに触れる最初のきっかけになる場所です。美術館では、障がいのある方や赤ちゃん連れの方などだれもが気兼ねなく来館できる「フラットデー」も開催しており、広くさまざまな方に来館いただけるよう取り組んでいます。

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来館者皆さんが安心して利用できる「ウェルカムルーム」


歴史の中で様々な役割を果たしてきた旧朝香宮邸、そして今、美術館として時を紡いでいる庭園美術館には、ホワイトキューブにはない、時の重なりとそこで過ごした人々の笑顔や想いが刻まれていることに改めて気付かされました。

庭園美術館の建物そのものを楽しみたい!という方にこそぜひ、「建物公開2025 時を紡ぐ館」を訪れていただきたいと思います。

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左)庭園美術館ですから、「庭園」もぜひ散策してみてください。芝庭・日本庭園・西洋庭園があり、 伸びやかで涼やかな光景に、都心にいることを忘れそうです。 右)1936年に上棟した茶室「光華」。 戦前の茶室には珍しい立札席を備えており、本館と共に重要文化財に指定されています。



観覧の印象をお土産に。ミュージアムショップもお忘れなく!


新館にあるミュージアムショップでは、庭園美術館の意匠をデザインに活かしたオリジナルグッズや、展覧会にちなんだデザイン性の高いアートグッズ、書籍、日用雑貨などをご用意しています。

今回の「建物公開2025 時を紡ぐ館」開催を機に、ポストカード・マスキングテープ・アートマグネットの3種を新発売しました。

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日常遣いしやすいアイテムなので、いつでも庭園美術館の美しい意匠に親しむことができます


いずれも、建物装飾をする特徴的なデザインをモチーフにしており、「あ、あそこの模様だわ!」と観覧の記憶を呼び起こしてくれる、庭園美術館ならではのミュージアムグッズです。ぜひお気に入りの一品を探しに、ミュージアムショップにもお立ち寄りくださいね。



東京都庭園美術館

住所:〒108-0071 東京都港区白金台5-21-9

電話:050-5541-8600(ハローダイヤル)

開館時間:10:00〜18:00(入館は閉館の30分前まで)

※8月15日〜9月26日の金曜は21時まで開館(サマーナイトミュージアム2025)

休館日:毎週月曜日(祝日・振替休日にあたる場合は翌平日)、年末年始、展示替期間中は庭園のみ入場可能

入館料:展覧会により異なる

展覧会「建物公開2025 時を紡ぐ館」

入館料:一般1,000円、大学生800円、高校生・65歳以上500円、中学生以下無料

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