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青森県立美術館特集その4|現代アートの楽しみ方、ここに極まれり!一度は行くべき「十和田市現代美術館」

更新日:3月28日

青森県立美術館特集 この冬、青森でアートな旅をしませんか?

【目次】

 

こんにちは。広報担当の大関です。

11月末、青森県立美術館で開催中の奈良美智氏の個展「奈良美智: The Beginning Place ここから」(特集記事その1)と「コレクション展2023-3」(特集記事その2)を見たくて青森を訪ね、どっぷりと作品の世界に浸り、眼福のひと時を過ごしました。


「奈良美智: The Beginning Place ここから」会期は2月25日まで

「奈良美智: The Beginning Place ここから」会期は2月25日までです

さて、せっかく青森を訪ねたならば、是非とも足を伸ばしてほしい街があります。

特集記事その3では弘前を訪ねましたので、今回は十和田へ。実は十和田市現代美術館は、私が現代アートの楽しさに初めて触れた思い出の場所。再訪に心が浮き立ちます。


十和田市ってどんなところ?

青森県南東部の中央に位置する十和田市。青森県立美術館の起点となる青森駅から十和田市現代美術館へは、まず新青森駅に出て七戸十和田駅まで新幹線で約15分、そこから美術館のある中心街までは路線バスで約40〜50分ほどです。


青く美しい十和田湖

青く美しい十和田湖。一帯は十和田八幡平国立公園に指定されています

十和田といえば、十和田湖を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。十和田市と秋田県小坂町にまたがるカルデラ湖で、国内第3位の水深326.8mを誇ります。文人の大町桂月は、紀行文『奥羽一周記』によってその美しさを全国に知らしめ、多くの人の憧れの景勝地となりました。


「山は富士 湖水は十和田 ひろい世界にひとつずつ」

「住まば日本(ひのもと) 遊ばば十和田 歩きや奥入瀬三里半」


などの文章を読むと、桂月がどれほど十和田湖に惚れ込んでいたかが伺えます。

その十和田湖から流れ出す唯一の河川が奥入瀬渓流です。

湖畔の子ノ口から焼山までの約14km、清流が滝や緩急の流れを形成しながら、原生林や苔むした岩を縫う様子は、心洗われる景観です。


「苔さんぽ」も人気の奥入瀬渓流

最近はコケと出会う「苔さんぽ」も人気の奥入瀬渓流

一般的に、下流の焼山から子ノ口を目指す方が、渓流各所にある見どころを見逃すことなく楽しめるのでおすすめとされています。渓流沿いに、遊歩道と国道(バス路線)が並走しているので、全距離を歩くもよし、少しだけ楽しむもよし、を体力に合わせて選ぶことができます。


とはいえ今は真冬。

青森県立美術館と十和田市現代美術館のはしご旅に、奥入瀬渓流をプラスするのは無理でしょう、と思った貴方。いえいえ、そんなことはありません。雪の奥入瀬・十和田湖もまた格別の美しさなんです。

十和田湖では今年で第26回を数えるイベント「十和田湖冬物語」が開催され、冬花火や屋台が並ぶ雪灯り横丁、青森・秋田・岩手の芸能パフォーマンスが披露される冬の国境まつりなどが楽しめます。また、奥入瀬渓流では氷瀑や氷柱をネイチャーガイドと散策する「奥入瀬渓流氷瀑ツアー」が開催。十和田市街からのツアーもあるので、街に泊まりつつ雪と氷に包まれた大自然を満喫できます。


「十和田湖冬物語」の開催は2024年2月2日〜2月25日

「十和田湖冬物語」の開催は2024年2月2日〜2月25日(火・水は定休日)


「奥入瀬渓流氷瀑ツアー」の開催期間は2023年12月中旬~2024年3月上旬

「奥入瀬渓流氷瀑ツアー」の開催期間は2023年12月中旬~2024年3月上旬(コースによる)

ところで、自然の美しさに目が行きがちですが、実は街も美しいのが十和田の魅力です。

十和田市の市街地は、京都のように「碁盤の目」に区画された美しい街並みが特徴で、近代都市計画のルーツと言われています。同じく格子状の町割りで知られる札幌よりはるかに早く、江戸時代の終わりには建設が始まっており、整然とした都市計画に基づいて発展してきました。


官庁街通りの春は桜色に染まります

官庁街通りの春は桜色に染まります

その中心部を通る十和田のシンボルロードが、「日本の道・百選」「美しい日本の歴史的風土準100選」に選出された長さ1.1kmの官庁街通り(通称・駒街道)です。なんと幅が36mもあり、松161本と桜155本が4列の並木を成し、車道より広い歩道には奥入瀬渓流や稲生川をイメージした水路や馬のオブジェも。400種6000株以上の宿根草が植えられた花壇が、四季の彩りを添えています。このスケール感、なかなかお目にかかれない堂々たる景観です。


馬や馬具などをモチーフにしたオブジェが通りに点在しています

馬や馬具などをモチーフにしたオブジェが通りに点在しています

なぜ馬のオブジェなのかというと、南部地方は古代より良質な馬の産地として知られており、十和田では1863年に馬市が開かれて以来、馬の競りで賑わってきました。戦時中には旧陸軍省軍馬補充部が設置され、馬産地として栄えた歴史に因んでいます。


この官庁街通り全体を美術館に見立てて、アートによる新しい体験を提供するまちづくりプロジェクト「Arts Towada」の中核施設として建てられたのが十和田市現代美術館です。

「Arts Towada」構想の背景には中央省庁再編や合同庁舎整備などによる事務所の統廃合と転居により、官庁街通りに多くの空き地が生じたことにあります。その跡地をアートの場として再生し、十和田の歴史や自然に想いを馳せ、未来に繋げるような利活用は全国的にも稀な取り組みであり、「十和田=アートのまち」として注目される契機となりました。


アートの一部になって楽しむ十和田市現代美術館

2008年に開館した十和田市現代美術館は、「アートを通した新しい体験を提供する開かれた施設」として国内外のアーティストによるコミッションワーク43点を展示しています。建物の設計を手がけた建築家・西沢立衛氏は、それらのコミッションワークに対して「アートのための家」というコンセプトで独立した展示室を設けており、美術館全体でひとつのまちのような造りになっています。

さらに、官庁街通りに面して大きくガラスの開口を持ち、通りからも作品を見ることができます。まちを歩く人も日々アートに触れることのできる開放感が、十和田らしさを培っています。


官庁街通り沿いに建つ十和田市現代美術館

官庁街通り沿いに建つ十和田市現代美術館。ガラス窓が多く開放的な印象をもたらします


私が十和田市現代美術館を初めて訪ねたのは2016年でした。それまであまり現代アートに馴染みがなかったので、「私に理解できるかしら?」とおっかなびっくりだったのですが、抽象的過ぎない意図と作品との近さ、なかには作品の内部に入り込んだりできるおもしろさと大きさに驚き、不安は吹き飛び、大好きな美術館のひとつになりました。


来館者を出迎えてくれるのは、鮮やかな花々で覆われた馬のモニュメント、チェ・ジョンファ《フラワー・ホース》です。十和田市と馬の関わりや官庁街通りに四季折々に咲く花々などをイメージした作品で、高さ5.5mの竿立ちになった馬体は堂々たるものですが、花で飾られることで威圧感はなく、むしろ大いなる歓迎ぶりに明るく浮き立つ気持ちになります。


チェ・ジョンファ《フラワー・ホース》

チェ・ジョンファ《フラワー・ホース》。この日は雪だったので、カラフルな馬がことさらに映えました

一方、カフェ・ショップ棟の外壁に描かれているのが、奈良美智《夜露死苦ガール2012》です。挑戦的な笑みにも、怒りを抑えているようにも、泣き出す一歩手前の堪え顔にも見える少女。ダメージの入ったワンピースにブーツで、組んだ足をトントンと鳴らしています。高さ約10mの壁面に描かれた実物は迫力があり、視線の強さはこちらの心の底を見透かすようです。


奈良美智《夜露死苦ガール2012》

奈良美智《夜露死苦ガール2012》

エントランスを入ってすぐ、最初に出会う作品は美術館の代名詞としても知られているロン・ミュエク《スタンディング・ウーマン》です。「十和田 大きいおばさん」と検索するとすぐに出てくるこの女性像。威圧感のある強い眼力が特徴ですが、見る角度を変えるとなんだか悲しそうにも優しそうにも見えます。細部にわたってリアルに作り込まれていますが、実は見上げた時に大きく見えるように顔や手は実際の比率より大きく作ってあるのだそう。

展示作品は一般客の個人的利用に限り写真撮影OKなので、作品と共に様々な記念撮影も楽しめます。


ロン・ミュエク《スタンディング・ウーマン》

ロン・ミュエク《スタンディング・ウーマン》


ロン・ミュエク《スタンディング・ウーマン》一部

皮膚の下の血管やシミ・シワ、爪まで、細部の表現に見入ってしまいます

続いての部屋は、塩田千春《水の記憶》。

2021年4月に開館以来初の常設作品の入れ替え、展示室の増築、寄託作品展示が行われたのを機に加わった作品です。美術館から制作依頼を受けた塩田氏がまずイメージしたのが、十和田湖に浮かぶ一艘の船だったそう。そのイメージを求めて、実物の木船を譲り受けて作品に用いています。場所・物・記憶、生と死を結ぶ縁を、無数の赤い糸を結んで繋ぎ止めています。


塩田千春《水の記憶》

塩田千春《水の記憶》


塩田千春《水の記憶》一部

森美術館で開催された個展の会場よりも展示室が狭いため、より密度を感じるように細い糸を使用しています

展示作品の中で一番気持ちが落ち着き、気がつけばずいぶん長居してしまった作品が、ハンス・オプ・デ・ベーク《ロケーション(5)》。古いラジオの音がわずかに聞こえる薄暗いダイナーのソファに腰掛け、目の錯覚を利用して演出された高速道路を眺めていると、だんだん時間や場所の感覚が混乱してくるのを感じます。それでもなお座っていると、「こんな景色を見たことがあったような、ないような…」と、自分の記憶すら怪しくなってきて、ぼーっとトランス状態に。この没入感、ハマります。


ハンス・オプ・デ・ベーク《ロケーション(5)》

ハンス・オプ・デ・ベーク《ロケーション(5)》。いつかの昔、この場所にいたような気がしてきます

一方、一番驚いたのは、栗林隆《ザンプランド》です。観覧客は靴を脱ぎ、テーブルに登り、さらにその上の椅子に乗って、天井に空いた穴から首を出し、ひとつ上の階を覗きに行きます。テーブルの上の椅子に乗るという、普段はしない行動の先に見えるものは…。これ以上は言えませんが、私は大層驚きました。ヒントはタイトル。《ザンプランド》とはドイツ語で「湿地帯」という意味。ぜひぜひ、覗いてみてください。


栗林隆《ザンプランド》

栗林隆《ザンプランド》。覗いた者だけが知る特別な世界は、メンテナンスも大事なようです


こちらは2021年12月に増設された新展示室で公開されている、レアンドロ・エルリッヒ《建物—ブエノスアイレス》。床に広がるヨーロッパ風の建物のファザードの上に横たわりポーズを取ると、斜めに立ち上がった鏡には、曲芸師のように重力から解き放たれた姿が映し出されます。

案内をしてくださった十和田市現代美術館の広報さんに促されるままに、私も体を張りました。こんな風に「落ちるぅ〜!」なんて演技をするのは何十年ぶりか。もっと大人数で挑戦したら、主観と客観がより交錯しておもしろい体験になりそうです。


レアンドロ・エルリッヒ《建物—ブエノスアイレス》

レアンドロ・エルリッヒ《建物—ブエノスアイレス》


レアンドロ・エルリッヒ《建物—ブエノスアイレス》

いつの間にか恥ずかしさを忘れ、演者と観客の両方の視点で作品作りに励んでいました

これまで現代アートに対して、作品に能動的に疑問を持ったり反論したりするだけの知識を有していなければ鑑賞者になれないのではと思っていたのですが、十和田市現代美術館の作品を見ていたら、必要なのは対話であって、持論や結論が明確に無くてもいいんだと気がつきました。ワークショップに参加するように、まずは作品を見て、感じて、試してみてほしいと思います。


ガラスの中はソ・ドホ《コーズ・アンド・エフェクト》

ガラスの中はソ・ドホ《コーズ・アンド・エフェクト》。外から見るとまた作品の印象が変わります


実は官庁街通りを挟んだ美術館の向かいにも、見逃せない展示があります。旧税務署跡地を利用した「アート広場」には、芝生の緑と鮮やかなコントラストを成す草間彌生《愛はとこしえ十和田でうたう》をはじめ、7作品が展示されています。まちなか常設展示と位置付けられていて、より広域に点在するストリートファーニチャーとともに、開かれたアートを楽しむことができます。


エルヴィン・ヴルム《ファット・ハウス》《ファット・カー》2010年 撮影:小山田邦哉

エルヴィン・ヴルム《ファット・ハウス》《ファット・カー》2010年 撮影:小山田邦哉

《ファット・ハウス》内では、家自身がアイデンティティについてつぶやく映像が流れています


インゲス・イデー《ゴースト》《アンノウン・マス》2010年 撮影:小山田邦哉

インゲス・イデー《ゴースト》《アンノウン・マス》2010年 撮影:小山田邦哉

キノコ?アメーバ?その正体はオバケ!かわいくて親しみが湧きます


なお、2023年12月15日〜2024年2月14日の16:30〜21:00は、アート広場を青色LEDで飾った「アーツ・トワダウインターイルミネーション」が開催中です。


「アーツ・トワダウインターイルミネーション」

「アーツ・トワダウインターイルミネーション」。昼間とは違った印象が楽しめます

鑑賞の前後に利用したいミュージアムカフェとショップ

官庁街通りに面して、外壁に奈良美智《夜露死苦ガール2012》とポール・モリソン《オクリア》が描かれた建物が、「カフェ&ショップ cube(キューブ)」です。

カフェの床もまたアート。マイケル・リン《無題》の色とりどりの花模様が広がっています。十和田の伝統工芸である南部裂織に着想を得た作品で、花柄がパッチワークのように連なります。


カフェ&ショップ

白い壁面に床のアートがよく映えて、気持ちも華やぐカフェ&ショップ


カフェ&ショップ

オープンカフェの気分も味わえる大きな窓が特徴です

コンセプトは、“地元のおいしいもの、良いものを地元の方や国内外からの観光客へ伝えたい”ということで、青森・十和田ならではの素材を使ったメニューが味わえます。

私がランチに選んだのは、十和田の食材活用メニュー「とわだ短角牛とごぼうのビーフパイ」。届いた瞬間からパイ生地の良い香り。


「とわだ短角牛とごぼうのビーフパイ」970円

「とわだ短角牛とごぼうのビーフパイ」970円

この短角牛は、市内の牧場「SASAKI FARM」で牧草のみで飼育しているもので、滋味深い肉の旨みに十和田産ごぼうと青森県産ガーリックの風味が重なり、とても力強い味わい。ずっしりと挽肉の密度が高く、満足感のある食べ応えです。さらに季節の野菜スープ(この日はニンジンのポタージュ)とサラダが付いているのですが、サラダにはスライスオリーブやフライドごぼうがトッピングされていて、土地柄を感じさせつつも、おしゃれで美味。パイとスープとサラダの味のバランスもよく、楽しいランチでした。


あと、小さなことですが、おてふきの手書きイラストとコメントが可愛いくて。こういうちょっとした気遣いって嬉しいなぁと思います。


おてふきの手書きイラストとコメント

ひとつひとつ違うところがまた嬉しい!温かさを感じるサービスです

デザートは「創業70年 十和田で人気の『福田菓子舗』のアップルパイ」。このネーミングだけで食べなければいけない気になります。ゴロッと大きめのりんごはシャキシャキと食感を残してあり、シナモンが効いています。生地はフィリングと程よく馴染んだしっとり系。この安定感ある味わいに、創業70年の重みを感じます。


「創業70年 十和田で人気の『福田菓子舗』のアップルパイ」480円

「創業70年 十和田で人気の『福田菓子舗』のアップルパイ」480円

アップルティーは草間彌生さんの美術館オリジナルデザインカップ!


『福田菓子舗』は、2012年から十和田市現代美術館の企画展やイベントに合わせて限定スイーツを提供しているとのこと。次回はぜひ限定スイーツのある時期に合わせて訪問したいと思います。


ミュージアムショップでは、草間彌生や奈良美智のアーティストグッズを中心に、文具やTシャツ、食品などのオリジナルグッズを扱っています。


ショップ内観

コンパクトなスペースですが、「これ欲しい!」と思えるセレクトされたグッズが並びます


ミュージアムグッズ色々

草間グッズが良く売れるほか、インバウンドにはチェ・ジョンファ《フラワー・ホース》のTシャツが人気だそう

 

今回は青森駅方面からアクセスしましたが、東京方面から十和田市現代美術館に向かう場合は、八戸駅で下車してバスを利用しましょう。八戸駅から十和田市中心街まで約1時間10分ほどで到着します。

来春からは青森県内の5つの美術館・アートセンターによる「AOMORI GOKAN アートフェス2024 つらなりのはらっぱ」の開催が予定されていますが、八戸には会場のひとつである八戸市美術館があるので、あわせて訪問するのも良いですね。


十和田市現代美術館 ※1/22-29までメンテナンス休館中です

住所  :〒034-0082 青森県十和田市西二番町10-9

電話  :0176-20-1127

開館時間:9:00〜17:00(最終入館16:30)

休館日 :月曜日 (祝日の場合は翌日に振替)

観覧料 :一般 1,800円、高校生以下は無料 ※企画展転換期は1,000円

十和田市現代美術館ホームページ|https://www.hirosaki-moca.jp


カフェ「cube cafe&shop」 ※1/22-29までメンテナンス休館中です

営業時間:9:00〜17:00 (L.O.16:30)

定休日 :月曜日、年末年始(火曜日が祝日の場合は翌日に振替)


【参考文献】

十和田市現代美術館 https://towadaartcenter.com

青森アートミュージアム5館連携協議会 https://aomorigokan.com

青森県観光情報サイト AmazingAOMORI https://aomori-tourism.com

十和田市役所 https://www.city.towada.lg.jp

一般社団法人十和田湖国立公園協会 https://towadako.or.jp


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