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青森県立美術館特集その2|青森県立美術館の「コレクション展2023-3」がおもしろい

更新日:3月28日

青森県立美術館特集 この冬、青森でアートな旅をしませんか?

【目次】

 

こんにちは、広報担当の大関です。

青森県立美術館特集 その1」では、開催中の奈良美智氏の個展「奈良美智: The Beginning Place ここから」(2023年10月14日〜2024年2月25日)をご紹介しましたが、せっかく青森県立美術館に来たなら、もうひとつ見逃せない展示があります。


「奈良美智:The Beginning Place ここから」

「奈良美智:The Beginning Place ここから」は2024年2月25日まで

 

青森県立美術館では常設展を「コレクション展」と呼び、春夏秋冬の4回の展示を基本に構成しています。時代別やジャンル別などではなく、青森ゆかりの作家の「個展」を軸にしつつ、テーマ展示や小企画展などが組み合わさり、訪れるたびに異なる展示を楽しめます。

 

現在開催しているのは、「コレクション展 2023-3」。奈良美智展よりちょっと短く、2024年1月28日(日)まで。そして2月10日からは「コレクション展 2023-4」が始まります。年明けに奈良美智展の2回目の観覧を予定しているようでしたら、コレクション展のスケジュールもチェックしておきましょう。企画展だけしか見ないなんて、絶対もったいないですよ!



アレコホール|マルク・シャガール(1887-1985)のバレエ「アレコ」の舞台背景画

チケットを買って、エントランスからエレベータで地下に降りると、まず美術館の中核となるアレコホールが出迎えてくれます。ヨーロッパの街でいうなら中央広場のようなところで、あちこち散策しては気がつけばまた戻ってきた、という風な場所。

ここにおよそ美術館の展示室にはありえないような、4層吹抜けの縦21m×横21m×高さ19.5mの大空間が広がります。先ほど、季節によって展示が変わると書きましたが、唯一常設されているのが、こちらに展示されているマルク・シャガール(1887-1985)のバレエ「アレコ」の舞台背景画です。この場所はアレコを展示するために作られた専用舞台なのです。


アレコホール

美術館の中核となるアレコホール


通常、美術館展示では作品が額装されていたり、足元にロープが張られて間近に見ることが叶わなかったりしますが、ここでは綿布にテンペラで描かれた縦9m×横15mの大作を、囲わずにそのまま展示しています。巨大な作品の真下へ行って見上げると筆致の詳細まで見られ、感動ひとしお! さらに、本来青森県が収蔵しているのは第1、2、4幕の3点で、残る第3幕はアメリカ・フィラデルフィア美術館が収蔵しているのですが、2017年の改修工事をきっかけに長期借用中で、2023年3月末までとされていた期間がもう1年延びて、2024年3月まで貸与されています。ようやく旅が楽しめるようになった今こそ、アレコ全4幕を観覧する青森旅のチャンスです。


アレコポストカード

ミュージアムショップではアレコ4幕のポストカードを販売しています。

「色彩の魔術師」と呼ばれるシャガールならではの鮮やかな色があふれます



展示室F+G|「奈良美智と棟方志功のあいだ」

アレコホールの奥へ進んだ展示室F+Gでは、企画展「奈良美智:The Beginning Place ここから」の関連展示として、奈良美智と棟方志功の作品を交互展示するユニークな試み「奈良美智と棟方志功のあいだ」が行われています。


「奈良美智と棟方志功のあいだ」

右)奈良美智《Y.N.(Self -portrait)》2002年 /左)棟方志功《没然の自板像の柵》1968年

最初はそれぞれの自画像から。こうした近似モチーフを並べて展示しています


青森出身の芸術家といえば、版画家・棟方志功(1903-1975)を挙げる人も多いと思います。版画で独自の境地を拓き、国際美術展で二度のグランプリ受賞、「世界のムナカタ」として20世紀を代表する芸術家です。

そして、奈良美智(1959-)は、挑むような目つきの女の子の絵や、ユーモラスでどこか哀しげな犬の立体作品などで、国も世代も超えて多くの人々の心をとらえてきた美術作家です。二人の年齢は50歳以上離れていますが、傑出した二つの個性の根底には、青森の風土が共通していることをうかがわせる、とてもユニークな展示です。


奈良美智《般若猫》(1989)

奈良美智《般若猫》(1989)


棟方志功《虎猫図》(1940)

棟方志功《虎猫図》(1940)


それぞれ猫はこう描くのかと、ニヤニヤしながら見てしまいます。

また、イメージにあまりないですが、二人とも陶器作品も作っています。描かれているモチーフは…。やっぱり共通性を感じます。


奈良美智《STAY GOOD》(2007)

奈良美智《STAY GOOD》(2007)


棟方志功《黄渇釉妃神図》(1961)

棟方志功《黄渇釉妃神図》(1961)


青森県立美術館を代表する作品のひとつである、奈良美智のコミッションワーク「あおもり犬」は展示室Fの窓の外に展示されています。展示室の外部トレンチから今まさに発掘されたというコンセプトで、その下半身は地中に埋まったまま。長い眠りからまだ目が覚めきらない様子で、じっとうつむいて目を閉じています。

春から秋には野外通路を通って「あおもり犬」足元まで近づき、真下から眺めることができますが、冬の積雪時は野外に出られないので展示室のガラス越しの見学のみ。しかしその代わり、雪の綿帽子を被るレアな姿が見られます。どちらも見たくなる、青森の気候を活かした野外展示のおもしろさは、青森県出身作家ならではなのかもしれません。


雪の帽子をかぶった「あおもり犬」

雪の帽子をかぶった「あおもり犬」。冬限定の姿です



展示室N + 棟方志功展示室|棟方志功:マイ・ボデイー・アオモリ

コレクション展の内容に応じて展示する作品が異なるので、展示室にはアルファベットが冠されるのみですが、ひとつだけ作家名が付けられた展示室があり、それがこの棟方志功展示室です。

ダイナミックでエネルギッシュな作品が活きる大空間で、作品鑑賞の邪魔をしないように壁一面にガラスが貼られています。画集などで見たことがある作品も、実際に見るとこんなにも迫力と余韻が素晴らしいのかと、本物の力を存分に感じ取ることができます。


棟方志功《花矢の柵》(1961)

棟方志功《花矢の柵》(1961)は、青森県庁新庁舎のために描かれた、六曲一雙の大作。

世界的に高い評価を得て多忙を極めるようになっても、青森から依頼された仕事は可能な限り引き受けていたそうです


青森市内には棟方作品の国内最多収蔵数を誇る棟方志功記念館がありますが、来年2024年3月末で閉館、その後全作品が青森県立美術館に移管されることが決まっています。閉館の報せを聞いた時はドキッとしましたが、これまで同様に青森に来れば棟方の作品に触れることができると知り安心しました。


棟方志功《幻想板画柵》1956年

棟方志功 左)「D坂の殺人事件」《幻想板画柵》1956年  右)「人間椅子」《幻想板画柵》1956年


《幻想板画柵》(1956)も展示されています。小学生の時、江戸川乱歩作品にはまっていたのですが、あの世界観と棟方志功の版画はベストマッチに思え、「D坂の殺人事件」や「屋根裏の散歩者」「人間椅子」など、また読みたくなってきました。棟方の版画は文学作品の挿絵にも多く用いられているので、原画観覧をきっかけに、作品を再読するのもおもしろいかもしれません。



展示室O+P+Q+M+L+J|生誕130年 今純三:純三が描いた戦前の青森

今回のコレクション展の中心展示は、青森県立郷土館と連携したサテライト展示「生誕130年 今純三:純三が描いた戦前の青森」です。

今純三(1893-1944)は日本を代表する近代銅板画家の一人で、兄は建築・服飾・民俗学など幅広い分野で活躍した研究者・今和次郎です。和次郎は人々の暮らしや街並み、風景などを詳細に調査・分析し、図やイラストで記録して社会変化を考察する「考現学」を提唱したことで知られています。純三は、画家としての観察力と描写力を活かして、兄の考現学調査も手伝っており、その影響が代表作の『青森県画譜』や『創作版画小品集(エッチング小品集)』にはよく現れています。


今純三「露店、屋台店のさまざま」《青森県画譜・3集》

今純三「露店、屋台店のさまざま」《青森県画譜・3集》


今純三「郷土工芸図・津軽のこぎん」《青森県画譜・5集》

今純三「郷土工芸図・津軽のこぎん」《青森県画譜・5集》


実は訪青する前から、奈良美智展と並んで楽しみにしていたのが、今純三作品を見ることでした。こうした街の賑わいが聞こえてきそうな温もりのある絵や、民藝技術を伝える絵を見ていると、まるでその場にタイムトリップしたような気分が味わえ、とても好きなのです。


今純三 左)「冬の街頭風俗」の一部《青森県画譜・6集》 右)「山村風俗」の一部《青森県画譜・11集》

今純三 左)「冬の街頭風俗」の一部《青森県画譜・6集》 右)「山村風俗」の一部《青森県画譜・11集》


緻密で精細な描写は、ただ美しいというだけでなく、当時の人々の暮らしぶりや風習、祭りの決め事などが記録されており、歴史・民俗学的にも貴重であることが伺えます。見れば見るほど吸い込まれそうなエッチングの細かさに、「描き残すこと」への純三の想いの強さを感じることができます。


今純三《創作版画小品集第2集・浅虫の風景とスケッチ》(1935)

今純三《創作版画小品集第2集・浅虫の風景とスケッチ》(1935)


今純三《エッチング小品集第32集・スキー場のスケッチ》(1935)

今純三《エッチング小品集第32集・スキー場のスケッチ》(1935)



展示室I|成田亨:彫刻と怪獣の間で

デザイナーで彫刻家の成田亨(1929-2002)の展示では、「ウルトラマン」や「ウルトラセブン」等の初期ウルトラシリーズのヒーローをはじめ、カネゴンやゼットンなど数々の怪獣の原画を見ることができます。遠方からも多くのファンが観にくるということで、必ず展示している作家の一人です。

 

成田 亨《カネゴン決定稿》1965年

成田 亨《カネゴン決定稿》1965年 

ペン、水彩・紙 34.6×22.4cm

 

着ぐるみ化にともなう制約のないウルトラマンや怪獣のデザインはとてもアーティスティック。圧巻は、⾃⾝の彫刻の集⼤成とも⾔える《⻤モニュメント》(1990 年)。その筋⾻隆々な体の表現は、⼿を触れたら筋⾁の躍動や伝わってくるんじゃないかと思うほどリアル。成⽥の表現の幅を感じることができます。

 


展示室H|没後40年 寺山修司:ジャパン・アヴァンギャルド

寺山修司(1935-1983)も弘前市出身。マルチに活躍した寺山ですが、没後40年ということでアングラ文化を象徴する「演劇実験室◎天井桟敷」のポスター18点を展示しています。権力や体制を批判し、既存の価値観を刺激的なイメージで覆す作品は、時が経っても全く色褪せません。


宇野亜喜良《星の王子さま》1968年

宇野亜喜良《星の王子さま》1968年  

シルクスクリーン・紙  102.7×72.9cm

 

 

 ちょっとクセ強めの個性が際立つ、青森県ゆかりの作家たち。

時代や流派などでまとめられたコレクション展ならば、一度の訪問でこれほど多彩な作品に出逢えないかもしれませんが、作家ごとの個展形式なので、いろいろなジャンルを見ることができて、まるでビュッフェのような楽しみ方ができます。

逆に、お目当ての作家がいらっしゃる場合は、ぜひコレクション展の内容を確かめて、訪青の時期をお決めになるといいかもしれません。



観覧の後はミュージアムショップへ

ミュージアムショップでは、青森ゆかりのアーティストグッズをはじめ、青森ならではの雑貨や小物、食品などを取り揃えています。

奈良美智、棟方志功、成田亨、馬場のぼる、関野凖一郎らのポストカードや文具・トートバッグなどや、こぎんやりんごの木の木工品、津軽塗など手仕事の温もりが伝わる雑貨、手ぬぐいやクリアファイルなどのショップオリジナル商品のほか、図録や書籍などもご用意しています。ぜひ観覧の記念となるグッズを探しに、足を運んでみてくださいね。


ミュージアムショップ内観

展覧会概要 「コレクション展2023-3」

会場  :青森県立美術館 地下1階、地下2階展示室

会期  :2023年9月30日(土)~2024年1月28日(日)

休館日 :2023年10/10(火)、10/23(月)、11/13(月)、27(月)、

     12/11(月)、25(月)−2024年1/1(月・元日)、9(火)、22(月)

開館時間:9:30-17:00(入館は16:30まで)

     ※1/20(土)はナイトミュージアム開催につき、20:00まで開館(入館は19:30まで)

観覧料 :一般510円、高大生300円、小中生以下100円


青森県立美術館ホームページ|https://www.aomori-museum.jp

青森県立美術館ミュージアムショップ|https://www.aomori-museum.shop

青森県立美術館ミュージアムショップinstagram|https://www.instagram.com/aomorims/

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